研究

 リハビリテーション医学・医療を発展させるためには、人々が生活していくため基本である「活動」、そして活動するために必要な「身体機能」、活動を妨げる「障害」について様々な視点から解析を行い、新たなる知見を見つけ出していく事が必要です。
 横浜市立大学医学部リハビリテーション科学教室では、リハビリテーション医学・医療の発展と人々の生活に貢献するために、「活動」「身体機能」「障害」に焦点を当てた研究に取り組んでいます。
1)スモン患者における運動機能に関する研究(画像解析を利用した体幹バランス能力の評価)
 キノホルムによる薬害であるスモン(SMON、subacute myelo-optico-neuropathyの略称、亜急性脊髄視神経症)は下肢の痙性麻痺、深部覚障害、異常知覚、視覚障害といった神経障害を生じる病態です。当時の厚生省と原告患者との和解が成立した際に、スモンについての研究を行うことが条件に挙げられており、当教室では長年にわたりスモン患者さんの検診事業に協力するとともに、患者さんのご協力をいただき身体機能や障害についての研究をしています。
 2017年度からは2次元動画解析の手法を用いた動作解析を行うことで深部覚障害などによるバランス障害、体幹失調について評価を行う研究をしています。前額部に計測用のマーカーを貼付し、座位足踏み動作をした際のマーカーの移動距離を動画解析ソフトで計測します。年齢調整した健常対照群と比較して歩行困難なスモン患者群ではマーカーの移動距離が延長する傾向が見られました。侵襲が少なくどこでも測定可能という点からも今後多用し応用可能な手法と考えています。

2)脊髄損傷後患者における疼痛発症にかかわる中枢神経系の機能的・構造的変化の探索
 脊髄損傷後神経障害性疼痛について、大阪大学脳神経外科・和歌山県立医科大学リハビリテーション科との共同研究を行っています。慢性期脊髄損傷患者さんを対象として各種臨床症候を整理し、fMRIを用いて機能的・構造的変化を調べることで客観的指標を探索します。また身体活動量との関係も調査しています。

3)維持期心臓リハビリテーションに向けたIoTデバイスの開発と実践
(横浜市・NTTグループとの共同研究)
 心臓リハビリテーションは急性期・回復期だけでなく、維持期も含めて生涯に渡り継続することが推奨されています。しかし、本邦の医療制度では維持期以降も継続的に実施していくのは困難なのが実情です。そこで横浜市は「横浜市心臓リハビリテーション強化事業(CREYoN2プロジェクト)」を立ち上げ、横浜市内の心リハの強化・地域とのネットワーク構築を進めています。同時に、横浜市立大学・横浜市・NTTは協働して、維持期心リハに使用し患者の行動変容を促すウェアラブルデバイス・スマートフォンアプリケーションを開発しています。このIoTデバイスは、心肺運動負荷試験に基づき各患者に応じた身体活動量や歩数を設定することができ、それらが適切に達成できているかを患者・医療者にフィードバックすることが可能です。現在、臨床研究の計画・実施を遂行しており、今後は心リハ強化事業の参加施設全体で使用する予定です。これにより、心リハ継続が困難な維持期においてもフォローアップすることが可能になり、心血管イベントの抑制・死亡率の減少に繋がると考えています。 新患数推移

4)肺高血圧症患者における運動耐容能と身体機能について
 肺高血圧症患者において、近年有酸素運動やレジスタンストレーニングなどのリハビリテーションの有効性が確認されつつあります。また運動耐容能(体力)が肺高血圧症患者の長期的な予後を規定することが明らかにされています。当教室では、横浜市立大学循環器内科と協力して、その運動耐容能に影響を与える因子について身体機能や呼吸・循環動態を含めて検討しており、今後のリハビリテーションプログラムに生かすべく研究を進めています。

5)肝胆膵患者の周術期におけるたんぱく質補給と運動療法の有効性について
 肝胆膵癌における手術療法は非常に侵襲が大きく、周術期の合併症や術後の体力低下により日常生活能力が低下するリスクがあります。術前の栄養状態や運動耐容能(体力)が術後の合併症頻度に影響することが報告されており、術前からのリハビリテーションが重要となります。
 本研究では術前に栄養補給と運動療法を合わせて行うことで、術後の合併症リスクや在院日数、退院時の運動耐容能などを改善することが可能か検討しています。

6)心不全患者に対するNPPVを使用した運動療法の有効性について
 心不全患者にNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)を実施することで、呼吸器・循環器・骨格筋などの機能が改善することが知られており、心不全治療の一つの手段として用いられています。先行研究では、健常成人に対してNPPVを使用した有酸素運動を実施することで心肺機能が改善することが報告されています(Moriki T, Nakamura T et al. PLoS One 2017)。
 そこで当教室では、心不全患者に対してNPPVを使用した運動療法の効果や安全性、また実施後の中長期的なトレーニング効果などにおいて研究を進めています。

7)運動時における血中二酸化炭素動態について
 運動時の血中二酸化炭素動態は骨格筋の代謝状態や肺胞換気などの様々な要因によって変化すると考えられています。本研究では、健常者を対象に、心肺運動負荷試験(CPX)にて運動負荷を行い、その際の動脈血二酸化炭素分圧を経皮的CO2モニターにより経時的に測定しています。結果を分析することで運動中の二酸化炭素の血中動態を解明し、かつ、今後の臨床への応用の可能性について検討しています。

8)ICU管理中の鎮静患者に対する電気刺激療法の効果について
 集中治療室では治療のために鎮静薬を用いて患者様の安静を保ちます。しかし、その間に筋委縮が生じ、生命の危機は脱したものの日常生活に復帰することが難しくなる症例を経験します。また、ICU患者において骨格筋の減少は死亡率や合併症頻度の上昇など不良な転記と関連していると報告されています。
 鎮静中には運動療法が困難ですが、代替手段として電気刺激療法を行い、骨格筋量の維持を行う研究を行っています。

9)TAVI実施患者における身体機能と運動療法の有効性について
 日本において80歳以上の超高齢者人口は増加しています。高齢化に伴い、動脈硬化性の大動脈弁狭窄症の発症リスクが増加し、大動脈狭窄症患者も増加傾向にあります。重症大動脈弁狭窄症に対する治療法として近年、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が開発され外科手術と同等の治療成績が報告されています。TAVI患者の特徴として高齢で、かつ術前の身体機能が低下しているフレイル状態であることが挙げられ、術前後のリハビリテーション治療が重要であります。TAVI患者に対する安全かつ、効果的な運動療法を検討し、その有効性についての研究を進めています。

10)ICUでの活動量が身体機能や在院日数に及ぼす影響について
 ICUでの早期からの離床や積極的な運動療法の有効性についての報告は多岐にわたり、早期からのリハビリテーション介入が重要であるとされています。
当教室では、ICUでの離床時間や運動時間などの活動量が身体機能や在院日数に及ぼす影響について検討しております。

11)FAI患者に対するリハビリテーション治療の有効性について
 近年、股関節の変形や機能障害をきたす大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI: Femoroacetabular Impingement)という病態が注目されています。このFAIに対して、リハビリテーションを含めた保存療法の有効性が提唱されています。
 当教室では、横浜市立大学整形外科と協力して、股関節だけでなく腰椎・骨盤・全身の姿勢などに着目したリハビリテーションプログラムの開発・検証、また関節鏡下手術後のリハビリテーションプログラムの効果などについて研究を進めています。

12)変形性股関節症、人工股関節全置換術後患者における三次元動作解析を用いた関節応力の検討
(共同研究:横浜市立大学整形外科教室、龍谷大学工学部機械システム工学科)
 三次元動作解析装置を用いて、変形性股関節症患者の姿勢および動作の詳細な解析を行い、関節にかかる応力分析を行っています。そのデータを用いて、プログラム上で骨、関節、筋肉に生じる応力を計算できるプログラムの開発に協力しています。

13)脊髄損傷の機能回復指標の創出
 脊髄損傷の運動効果・機能回復の新規マーカーの創出を目指しています。
神経炎症に着目して、損傷を受けた神経細胞体、アストロサイト、ミクログリア(神経の支持細胞)の組織学的解析を行っています。
神経炎症とは、物理的に神経組織が損傷を受けた後に起こる、二次的な損傷と言われています。具体的には再生しようとする神経組織が空洞化し、瘢痕化してしまうのです。
この、二次的な損傷をいかに抑制するかが、運動機能および認知機能低下を最小限にとどめ、リハビリテーションの効果を高める可能性を秘めていると考えています。
二次的損傷の抑制が、急性期運動療法が可能にするのではないかと考えています。

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